![]() 何よりも凄いと感じたのは、演出力の圧倒的な素晴らしさ。 特に印象に残ったのは日本パートの描写。 日本を描いた海外出身の映画監督は沢山いるけど、本作程自然に現在の東京の日常が感じ取れる演出をした作品はないんじゃないかと思う。 「ロスト・イン・トランスレーション」も好きだが、あちらが幻想的な一面を魅せるのに対して、本作は徹底してリアルだ。 群像劇が大好きでそれっぽい話だとついつい食指が動いてしまうのだけれど、ロバート・アルトマンやクエンティン・タランティーノ、ポール・トーマス・アンダーソン作品などを観漁っていた流れで、2002年に「アモーレス・ペロス」を観たのがアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品との出会い。 とにかくメキシコで生きる人々の荒々しい程の生命力とスピード感溢れる演出が印象的だった。コントラストの強い独特の色彩設計もツボにハマって一気にファンになったのを覚えている。 2本目「21グラム」を経て今作「バベル」は3本目。 もうスケールがこれでもかというぐらいに大きくなり、舞台はモロッコ・メキシコ・アメリカ・日本と、4カ国に渡って繋がるからどれだけ大変な制作現場だったか想像も出来ない。 「アモーレス・ペロス」がホームとしてのメキシコの人々を題材に描いていたのに対して、同じリズムと観察眼で今回は世界各国のドラマを描写している。 アメリカやモロッコの描写がどれだけリアルなのかは、実際に何年も住んだ経験があるわけでも無いので判らないけれど、少なくとも日本の描写はしっかりと地に足が着いていて正確だったと思う。 恐らく他の国の描写もその国々で受け入れられたからこそ、世界中で賞賛されているということは明らかなんだけど。 メキシコ出身の監督が一体どうやって4カ国もの国々をリアルに描写できたのか、不思議でしょうがない。やっぱりリサーチが徹底していたんだろうか…。 どちらにしても、わずか3作目で世界規模の壮大なプロジェクトを最後までコントロールしきった監督の人間力はさぞかし凄いんだろうなぁ、と作品とは関係ない所で感嘆してしまった。 物語の流れはモロッコに住む少年が撃ったライフルの弾をきっかけに、様々な人間関係が相互に影響していく。それは文字通り国境も超えて、世界の至る所へ。 近年のテロリスト事件等によるメディアの過敏な反応や政治的な葛藤など、様々な要素が絡んでくることは容易に想像出来たけれど、この映画で語られているのはもっと距離の近いコミュニケーションの根源的な部分。 国籍や言語の違いだとか人種の違いだとか、さらには聴覚障害であったとしても、人と人というのはお互いが解り合おうとしなければ繋がることは難しい。 相手を理解しようとする行為がコミュニケーションの大前提であるという、当たり前でいて忘れがちな事実を思い起こさせてくれる作品だと思う。 神に近づこうとして天罰を受けたバベルの街のエピソードは旧約聖書の有名な一節だけれど、「バベル」というのはあくまで作品の比喩としての名前で、罰を受けてしまった人間がコミュニケーションに苦しむ話ではなく、コミュニケーションの難しさを題材にして、それでもなおお互いに繋がり合おうと一生懸命に生きる人々のドラマであるということが強く伝わって来ました。 個人的に特に印象に残ったのは聴覚障害を持つチエコの揺れ動く心の描写。 友達とはしゃいでクラブで踊る場面から一人で部屋へ戻るまでの一連の流れは必見。菊地凛子さんの演技は本当に凄いと思います。 そしてやっぱり役者の力を引き出す監督の演出力が超一級。 バベル Official Website http://babel.gyao.jp/ バベル Official Blogsite http://blogs.yahoo.co.jp/babel_blog ![]() |
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